相続の手続きは誰に頼むか
相続の手続きは、不動産の登記が司法書士と弁護士、相続税の申告が税理士、争いのある場合の代理交渉が弁護士に分かれます。司法書士報酬アンケートでは相続登記の平均が74,888円(税込)でした。登録免許税は不動産の価額の千分の四で別に必要です。
誰に頼めるかは条文で決まっています
| 場面 | 対応できる専門職 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続登記(不動産の名義変更)の代理申請 | 司法書士、弁護士 | 司法書士法3条1項1号 |
| 遺産分割協議書の作成 | 司法書士(登記に関連する場合)、行政書士、弁護士 | 司法書士法3条1項2号、行政書士法1条の3 |
| 相続人や財産に争いがある場合の代理交渉 | 弁護士のみ | 弁護士法72条 |
| 相続放棄の申述書の作成 | 司法書士、弁護士 | 司法書士法3条1項4号 |
| 相続税の申告書の作成と税務代理 | 税理士のみ | 税理士法2条・52条 |
だから「相続をまるごと1人に頼む」ことはできません。争いが無ければ司法書士に登記を頼み、相続税がかかるなら税理士に申告を頼みます。分け方で揉めているなら弁護士です。行政書士法1条の3第2項は、他の法律で制限されている書類の作成は行えないと定めています。
手続きにかかる公的なお金
| 何に | 金額 |
|---|---|
| 登録免許税(相続による所有権移転登記) | 不動産の価額の千分の四 |
| 登記事項証明書 | 書面請求600円・オンライン請求で送付520円・窓口交付490円 |
| 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) | 1通450円(横浜市・大阪市で実測) |
| 住民票の写し | 1通300円・コンビニ交付200円(大阪市) |
| 相続放棄の申述 | 申述人1人につき収入印紙800円分 |
| 遺産分割の調停 | 被相続人1人につき収入印紙1,200円分 |
| 法定相続情報一覧図の写しの交付 | 無料 |
登録免許税には期限付きの免税措置が2つあります。数次相続で登記を受ける前に死亡した場合と、土地の価額が100万円以下の場合で、どちらも2027年3月31日までです(租税特別措置法84条の2の2)。戸籍の手数料は自治体の条例で定まるので、金額は窓口で確かめてください。
司法書士に頼んだときの報酬
日本司法書士会連合会が2024年3月に全国の5,558名を対象に行ったアンケートの集計です。金額は消費税10%込みです。
| 設例 | 有効回答 | 平均額 |
|---|---|---|
| 相続による所有権移転登記(土地1筆と建物1棟・固定資産評価額の合計1,000万円・相続人3名中1名が単独相続・戸籍謄本等5通の請求と遺産分割協議書と相続関係説明図の作成を含む) | 1,109件 | 74,888円 |
| 相続放棄申述の申立て書類の作成(戸籍謄本等5通の請求を含む) | 752件 | 40,892円 |
| 遺産承継業務(金融機関3行の預貯金各1,000万円・相続人3名・遺産分割協議書の作成から解約と振込の手続きの代理まで) | 502件 | 272,780円 |
アンケートには「相続を原因とする所有権移転登記の報酬は、相続人や不動産の数等により大きく左右されます」「報酬のほかに登録免許税や戸籍謄本等の実費などの費用が発生します」という注記が付いています。この平均は設例に対する回答で、自分の場合の金額ではありません。
相続登記には期限があります
2024年4月1日から、相続で不動産を取得した人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料です(同法164条)。
施行日より前に相続を知った不動産も対象で、2027年3月31日までに登記をしない場合で正当な理由がないときは過料の対象になります(法務省の相続登記の申請義務化に関するQ&A(別タブで開きます))。正当な理由の例として、相続人が極めて多数で戸籍の収集に時間を要する場合、遺言の有効性が争われている場合、重病等の場合、DV被害で避難を余儀なくされている場合、経済的に困窮して登記費用を負担できない場合が挙げられています。
3年以内に分け方が決まりそうにないときは、相続人申告登記という手続きがあります(同法76条の3)。期間内に申し出れば、登記の申請義務を履行したものとみなされます。ただしみなされるのは義務の履行で、所有権の移転が登記されるわけではありません。相続した不動産を売る場合は、買主に渡す名義が別に必要です(相続した不動産を売るときの登記)。
相続放棄と相続税には別の期限があります
- 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条)。家庭裁判所に申し出て伸長できます
- 相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条)。基礎控除額は3,000万円と600万円かける相続人の数の合計です(同法15条)