退職代行は誰が交渉できるか
退職代行は運営主体で3つに分かれます。民間企業は本人の意思を伝えるだけで、交渉はできません。労働組合は団体交渉ができ、弁護士は法律事務を扱えます。料金は民間企業12,000円から22,000円、労働組合19,800円から22,000円、弁護士19,800円から77,000円でした。
会社を辞めるのに、予告の義務はありません
期間の定めのない雇用では、いつでも解約を申し入れられ、申入れの日から2週間を経過することで雇用が終了します(民法627条1項)。労働基準法に、労働者が退職する前に一定期間の予告をしなければならないという規定はありません。同法20条の30日前の予告は、使用者が労働者を解雇する場合の義務です。
期間の定めがある雇用でも、やむを得ない事由があれば直ちに解除できます(同法628条)。ただし、その事由が本人の過失によるときは損害賠償の責任を負う可能性があると条文に書かれています。
運営主体で、できることが変わります
| 運営主体 | できること | 根拠 |
|---|---|---|
| 民間企業 | 本人の意思を会社に伝える(使者)。交渉はできない | 報酬を得て法律事務を扱えるのは弁護士だけ(弁護士法72条) |
| 労働組合 | 団体交渉ができる。会社は正当な理由なく拒めない | 労働組合法6条・7条2号 |
| 弁護士 | 未払い残業代や慰謝料の請求など法律事務を扱える | 弁護士法72条の適用外 |
だから「有給を全部消化したい」「未払いの残業代も請求したい」という依頼は、民間企業が引き受けられる範囲を超えます。何を頼みたいかが先に決まると、どの運営主体に頼むかが決まります。
東京弁護士会が名指しした事例
東京弁護士会の非弁護士取締委員会は、退職代行について2本の解説を出しています。1本目は具体的な事例で非弁行為を説明したもので、2本目は労働組合との関係を扱っています。
1本目が挙げている事例は2つです。1つは、業者が本人に代わって未払い残業代について会社と話し合い、支払われることになった例で、「弁護士等でない者が、法律的な問題について、本人を代理して相手方と話をすることは非弁行為です」と説明しています。もう1つは、業者が代金を受け取り、法律的な問題を提携先の労働組合に交代した例で、「お金を受け取って、法律的な問題の処理を他者へ斡旋することは、非弁行為です」としています。
2本目は、ある退職代行サービス業者の代表が逮捕されたという報道に触れ、そこに労働組合の関与もあったとしています。そのうえで「労働組合とは名ばかりで、労働組合としての実態が伴っていない場合もあるようです」「都道府県による資格審査を得たとする労働組合の中にも、実際には、労働組合としての実態を伴っていない場合があるようです」と書いています。実態が伴わなければ労働組合とはいえず、団体交渉もできないという説明です。
同じ解説は、会社の側が「退職代行サービスは非弁行為ではないか」として業者からの連絡を拒否する例も挙げています。連絡を拒否されると退職の話が進まず、結局は本人が自分で会社に連絡することになります。
料金の幅(参考。掲載している事務所ではありません)
実際に公式サイトを読んだ7件の料金です。掲載している事務所ではなく、料金の型を知るための参考です。検索の上位に出る事業者から選んでいるので、市場全体を代表する調査ではありません。
| 運営主体 | 料金の幅 | 分かったこと |
|---|---|---|
| 民間企業(2件) | 12,000円から22,000円 | 雇用形態で分かれる料金表がある |
| 労働組合(3件) | 19,800円から22,000円 | 組合の加入費と組合費の合計として表示する形がある |
| 弁護士(2件) | 19,800円から77,000円 | 通知だけのプランと交渉込みのプランで金額が分かれる |
7件とも運営主体(会社名・組合名・法律事務所名)を明記していました。ただしこれは検索上位からの抽出で、無作為の調査ではありません。運営主体を書いていない事業者が実在することは複数の情報源が示していますが、件数や比率は確認できていません。料金の高低は運営主体では決まらず、通知だけか交渉込みかで決まっていました(同じ弁護士事務所で19,800円と77,000円の2プラン)。
頼む前に確かめること
- 運営主体は何か。会社名・組合名・法律事務所名が書いてあるか。振込先の名義が運営主体と一致しているか
- 何を頼むのか。伝えるだけか、有給や退職日を交渉するか、未払いの残業代も請求するか
- その依頼は、その運営主体ができる範囲か。交渉が必要なら労働組合か弁護士になります
- 返金の条件。全額返金と書いてあっても、適用の条件は利用規約にあります
未払いの残業代や不当解雇を争うなら、最初から弁護士に相談するほうが手数が少なくなります。費用の目安は解雇と残業代の費用に、払えない場合の立替えは法テラスの条件にあります。