差押え物件と言われたが、どちらの話か
差押えには二つの道があります。債権者の申立てで裁判所が行う強制競売と、税の滞納で税務署が行う公売です。根拠は民事執行法と国税徴収法で別々で、売り方も買ったあとの引渡しも違います。まずどちらの話かを確かめてください。
道その一。裁判所の強制競売
債権者が申し立てたときの条文です。
開始決定の中で差押えを宣言するという形です。差押えは手続きの入口であって、それ自体が売却ではありません。
「執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない。(第四十五条第一項)」
道その二。税の滞納による公売
こちらは税務署が行います。
督促状を発した日から十日を経過して完納しないときという条件が条文にあります。裁判所は関わりません。
「次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。(第四十七条第一項第一号)」
公売は「しなければならない」と書かれている
差し押さえたあとの扱いです。
そして換価の方法も定められています。
「差押財産…は、この節の定めるところにより換価しなければならない。(第八十九条)」
公売の方法
条文はこうです。
入札か競り売り。裁判所の競売と同じ言葉が使われますが、根拠法は別です。
「税務署長は、差押財産等を換価するときは、これを公売に付さなければならない。2 公売は、入札又は競り売りの方法により行わなければならない。(第九十四条第一項・第二項)」
裁判所の売り方
強制競売のほうの条文です。
こちらも入札か競り売りですが、売却の方法を定めるのは裁判所書記官です。
「不動産の売却は、裁判所書記官の定める売却の方法により行う。2 不動産の売却の方法は、入札又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める。(第六十四条第一項・第二項)」
値段の決まり方(裁判所の競売)
いくらから買えるかにも条文があります。
評価人の評価に基づいて、裁判所が基準を定めます。
「執行裁判所は、評価人の評価に基づいて、不動産の売却の額の基準となるべき価額(以下「売却基準価額」という。)を定めなければならない。(第六十条第一項)」
買受可能価額は基準の八割
次の項に、申し出られる下限があります。
売却基準価額から十分の二を引いた額が下限です。安く見える理由の一つがここにあります。
「買受けの申出の額は、売却基準価額からその十分の二に相当する額を控除した価額(以下「買受可能価額」という。)以上でなければならない。(第六十条第三項)」
いちばん見落とされるのは、買ったあとです
代金を払ったあとの条文です。
ただし書が効きます。事件の記録上、買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。 引渡命令が出ない相手がいる、という意味です。誰が住んでいるかと、その人がどんな権原で住んでいるかを、入札の前に記録で確かめる必要があります。
「執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。(第八十三条第一項)」
このサイトが扱わないこと
個別の物件の評価、落札できるかどうか、いくらで落ちるか、入札の勧めは扱いません。占有者の権原が対抗できるかどうかも判断しません。弁護士、司法書士、宅地建物取引業者にご確認ください。
自分の不動産が差し押さえられた側の場合は、訳あり物件とはで五つの制約に振り分けています。
引用した条文は、e-Gov法令検索から二千二十六年九月二十一日に取得した現行法令です。
あなたの状況ではどうするか
- 物件情報がBITに載っていた
- 裁判所の強制競売です。根拠は民事執行法で、売却基準価額と買受可能価額の条文があります。税の公売とは別の手続きです。
- 官公庁のオークションで見つけた
- 税の滞納による公売の可能性があります。根拠は国税徴収法で、税務署長が公売に付すという条文です。裁判所は関わりません。
- 相場より安いので買おうと思っている
- 買受けの申出の下限は、売却基準価額から十分の二を引いた額です。安く見える理由の一部は、この下限の設定にあります。
- 買ったあと、すぐ住めると思っている
- 引渡命令にはただし書があります。買受人に対抗できる権原で占有していると認められる者には命令が出ません。誰がどんな権原で住んでいるかを、事件の記録で先に確かめてください。
- 自分の不動産が差し押さえられた
- このページは買う側の手続きを扱っています。滞納した税が原因なら督促からの日数の条文があります。まず何による差押えかを確かめ、弁護士または司法書士にご相談ください。
このページの根拠
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「民事執行法(昭和五十四年法律第四号)」2026-09-21取得
- e-Gov法令検索(デジタル庁)「国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)」2026-09-21取得