屋根裏の物音は何の動物か
音だけでは決まりません。農林水産省のマニュアルは、足跡なら指の数とパッドの形と大きさで、糞なら形と場所で順に絞る手順を示しています。見分けが要るのは対処法のためだけではありません。動物によって、許可が要るかどうかが裏返ります。
ネズミかそれ以外かで、法律上できることが正反対になる
環境省は、いえねずみ類を鳥獣保護管理法の対象外としています。
つまりネズミなら許可なく駆除できます。一方でイタチ、ハクビシン、アライグマは対象外になっていないので、原則として捕獲は禁止で、許可が要ります。
ネズミのつもりで買ったわなを、実はイタチだった相手に仕掛けると、手続きの要る行為になります。見分けを先にする理由はここにあります。
「ただし、鳥獣保護管理法第80条の規定により、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣」として、ニホンアシカ・アザラシ5種・ジュゴン以外の海棲哺乳類、いえねずみ類3種については、鳥獣保護管理法の対象外とされています。」
足跡で絞る
農林水産省のマニュアルにある手順です。指の数から入って、順に枝分かれします。
この先にタヌキ、キツネ、アライグマ、ヌートリア、ハクビシン、アナグマ、テンが並びます。屋根裏で問題になるのは主にハクビシン、アライグマ、テン、そしてイタチです。
「足跡からの見分け方/足跡の指の数は何本ですか/4本/5本。(5本の場合)中心のパッド(足底球)の形は?/円形/半月形。(半月形の場合)大きさは?/5cm以上/4cm以下。」
糞で絞る。ただし限界がある
糞は形が太いか細いか、両端の形、落ちている場所で絞ります。同じマニュアルに、この手順の限界もはっきり書かれています。
写真と見比べて一致しなくても、その動物ではないとは言い切れません。決め手にならなかったときは、足跡と両方を見てください。
「※糞は時期や食べ物によって色や形状が変わります。このフローはすべての条件にあてはまるものではありません。」
季節と時間帯も手がかりになる
ハクビシンは季節で家の中の居場所を変えます。
「夏場は涼しい床下を、気温が下がってくると暖かい天井裏(1階と2階の間の空間、屋根下)を日中の休憩場所として利用する。」
イタチは西と東で種類が違う
住宅に入るイタチは、西日本と東日本で事情が違います。西日本での代表格はシベリアイタチ(旧称チョウセンイタチ)で、東日本には入っていないとされています。
見分けの手がかりも書かれています。
「住宅街など人の生活圏を好む傾向があり水辺などの自然環境を好むニホンイタチと異なる。休息場として建物を利用するため糞尿や騒音などの被害も問題となっている。ニホンイタチよりやや大きく尾が長いのが識別点」
隙間の大きさからも絞れる
塞ぐべき隙間の大きさは、動物によってけた違いに違います。出典が別々なので、それぞれの原文を並べます。
コウモリは1センチ程度。鳥取県の案内です。ネズミは約2センチ。中央区の資料にある値です。シベリアイタチは3センチ程度で、農林水産省のマニュアルにある値です。ハクビシンは正方形なら一辺8センチ、円形なら直径9センチ、細長い隙間なら短辺6センチで、これは農研機構が成獣を使った実験で出した値です。
つまり、ハクビシンを想定して塞いだ家でも、コウモリやイタチには素通りです。逆に、細い隙間しか見当たらないのにハクビシンを疑っても合いません。見つけた隙間の大きさは、動物を絞る手がかりになります。
「特にカラダの小さいシベリアイタチは3cm程の穴や隙間からでも侵入するため、建物内該当箇所全てを封鎖する必要がある。」
なぜ自治体が動いてくれないのか
市役所に相談して「業者に頼んでください」と言われることがあります。その理由がマニュアルに書かれています。
農作物の被害と違い、家の中の被害は数字にしにくいため、行政の事業として扱いにくいという説明です。
「近年、農業被害を及ぼす野生動物と共に社会問題になっているのが、住宅などの屋根裏に侵入する「住環境害獣」である。厄介なのは被害が私有地建築物内であり、糞尿による悪臭、足音による安眠妨害、ノミ・ダニによる咬傷など精神衛生的被害が主で被害の数値化が難しく、自治体の介入がほぼできない。」
追い出すだけ、薬を撒くだけでは終わらない
対処の方針についても、マニュアルにはっきり書かれています。
つまり、動物を特定する意味は「何を使って追い払うか」ではなく「どの大きさの隙間を、どこで探すか」を決めることにあります。ハクビシンとシベリアイタチでは、塞ぐべき隙間の大きさがまるで違います。
「住環境害獣に対する防除は、捕獲や薬剤などを使用するのでは不十分である。動物が建物内に侵入できる全ての穴や隙間を封鎖する方法しかない。」
あなたの状況ではどうするか
- 足跡も糞も見つかっていない
- 天井裏に上がれるなら、まず点検口から覗いて痕跡を探してください。上がれない、または高所で危ないと感じたら、そこで止めてください。マニュアルにも、点検と封鎖には建築の知識が要るとあります。
- 糞は見つけたが、写真と見比べても判断がつかない
- 糞は時期や食べ物で色も形も変わり、この手順がすべてに当てはまるわけではない、とマニュアル自身が断っています。決まらないまま対策を選ばず、足跡や侵入口の大きさなど別の手がかりと合わせてください。
- ハクビシンらしい。自分で隙間を塞ごうと思っている
- 塞ぐ寸法の目安が実験で分かっています。ただし塞ぐ前に、中にいるかどうかを確かめてください。閉じ込めると家の中で死にます。
- 西日本に住んでいて、細長い動物を見た
- シベリアイタチの可能性があります(天井裏のイタチ)。体が小さく、ハクビシンよりはるかに小さな隙間から入ります。塞ぐ対象がまったく変わるので、ハクビシン向けの情報をそのまま当てはめないでください。
- 動物は分かったが、どこから入っているか見当がつかない
- マニュアルは侵入口の典型を挙げています。屋根の重なり、入母屋屋根の両隅、床下換気口、給湯器などの配管引き込み部です。そのうえで、点検と封鎖は建築の知識が要るため、被害が出ている場合は専門の防除業者に依頼するのが無難だとしています。
- 料金の見当をつけたい
- 動物が決まらないうちは、見積もりを比べられません。捕獲に許可が要るかも、塞ぐすき間の大きさも変わります。屋根裏の動物、駆除の料金に、見積もりを取る前に決めることをまとめてあります。
このページの根拠
- 農研機構 近畿中国四国農業研究センター「ハクビシンは狭い隙間から侵入できる」2026-09-21取得
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル【中型獣類編】」2026-09-21取得
- 環境省 自然環境局「鳥獣保護管理法の概要」2026-09-21取得
- 鳥取県 農林水産部 鳥獣対策課「野生鳥獣の捕獲等に係るよくある質問」2026-09-21取得
- 中央区保健所 生活衛生課環境衛生担当「ねずみ対策(強い繁殖力 絶食に弱い)」2026-09-21取得